ラシーヌの『ブリタニキュス』からの全集

ローマ皇帝の中でもとりわけネロが好きな自分は
ネロについて書かれてる邦訳本を蒐集してるのだが・・・

ラシーヌの『ブリタニキュス』も
コレクションに加えたい1冊だったので
岩波文庫を古本屋で見かける度に
購入すべきかどうか迷ってたが買わずに今に至ってた

迷いがあったのはこの本が紙質の最悪な時代に出てて
その後に重版されずにいたコトによるのだ^^;
時を経てすっかり褐変してる紙面が
余りにもよれよれでぼろぼろのモノばかりだったので
後生大事にするコレクションには加え難い品質だったと言えよう><

だからいつかこれが奇跡的に復刊されるか
もしくは更に望み薄だが新訳が出たりした折に
購入すべきと考えてたのは
なんせヲタのライフワークなのだからして
慌てる必要も無かったのでね^^

実際、今世紀まで待った甲斐があって
2006年夏に先に『フェードル / アンドロマック』が
続いて2008年に遂に『ブリタニキュス / ベレニス』が
どちらも渡辺守章訳で出たのだったヽ(´▽`)/

いや、より正確には『フェードル / アンドロマック』の方は
岩波文庫で久しく絶版だったのが復刊したのだがね

『ブリタニキュス / ベレニス』の渡辺守章訳は新訳で
実際に脚本として用いられた口語訳なのがむしろ非常に読み易かったが
既に『フェードル / アンドロマック』で馴染んでたせいもあるか?

自分がそれまでに読んだ『ブリタニキュス』は
『星の王子さま』の訳で名高い内藤濯の訳だったので
きっと真意を深く追求した意訳だと予想できて
もちろんそれはそれで魅力的だったのだが・・・

渡辺訳版の秀でた点は本文以上に訳注と「解題」にあるるる~

購入を迷い続けた内藤訳版『ブリタニキュス』は
渡辺訳版『ブリタニキュス / ベレニス』の1/4くらいの薄さだったのは
『ベレニス』が未収録だったのは言うまでもナイが
それは『ベレニス』が途轍もなく長い戯曲だったからでなく
(まあ実のトコロ『ブリタニキュス』よりも短い)
『ブリタニキュス』と『ベレニス』と合わせて
まず訳注が100ページ以上あり
「解題」がこれまた100ページ以上に及ぶために
200ページ強分の厚みが増してたのだった。(゚д゚lll)ギャボ

ページ数からも歴然としてるが
訳注も「解題」もとにかく詳細で隙が無く
とりわけ「解題」の中の「ラシーヌの生涯と作品」には
各作品の紹介と共にその作品に対する当時の評価などもあり
これを読んだら元の話を知ってるだけに(※)
ラシーヌの脚本をちゃんと読んだような気にすっかりなってしまえてたが
既出の4作(フェードル、アンドロマック、ブリタニキュス、ベレニス)以外は
後に筑摩書房の『世界古典文学全集【48】ラシーヌ』を入手して読んで
そういえば全く未読であった、と改めて気付いたくらい
渡辺の「解題」は詳し過ぎたのだったヽ(゚∀。)ノ
『アレクサンドル大王』は伝記の邦訳本を殆ど持ってたし、『アタリー』も『エステル』も『旧約聖書』にある

そうなのだ!
ラシーヌにすっかり魅了された自分は
絶版の筑摩書房の『世界古典文学全集【48】ラシーヌ』
遂に手に入れたのだったォゥ( -∀-)/

しかもかねてから中公世界の名著と筑摩世界文学大系は
「解説」の充実度で他に比肩するモノは無いと確信を持ってたので
迷わず筑摩書房の『世界古典文学全集【48】ラシーヌ』を購入したのだが
これが予想以上に素晴らしい内容だった!!

ラシーヌ執筆の全作品がもれなく年代順に収録されており
時代背景、公演の評判、ラシーヌが参考とした資料などの詳細が
各作品の冒頭の「解説」にあり
それとは別にラシーヌ自身が書いた序文や
時の権力者に送った作品についての書簡などもあり
要するにこれ一冊でラシーヌを完璧に網羅できてしまうのだ

それでも『ブリタニキュス / ベレニス』も買っておいて損はなかった
てか、この岩波文庫版新訳の訳注と「解題」は
ネロヲタの自分としては最強に俺得・・・バタリ ゙〓■●゙

それにしてもラシーヌの扱う題材は
どうしてこうも自分のヲタ趣味と合致するのだろうか?

トロイ戦争ヲタには既読の『アンドロマック』もだが
未読の中にも『イフィジェニー』があり
ゲーテの『タウリス島のイフィゲーニエ』と読み比べれば
一粒で2度美味しく愉しめるってモノだ♪

そして未読の中でも目玉は
なんと言っても『アタリー』と『エステル』だ(^^

これはフローベールの『ボヴァリー夫人』の中で
最も個性的な登場人物オメーが娘にアタリーと名付けてるのは
まさしくラシーヌの『アタリー』由来なのだが
そうと名づけたオメーの真意を推し量るためには
まず『アタリー』を読んでみナイコトには・・・p(-_-+)q

しかし『アタリー』の邦訳本は個別には無く・・・
いや、むしろあったとしてもどうよ?
『アタリー』を読んだだけでは全く意味不明なのだ。(゚д゚lll)ギャボ

また単に『エステル』と読み比べただけでも
なぜオメーが娘にアタリーと名付けたかは理解しようもなく
折り良くその裏事情であるトコロの
オメーが信仰する神ヴォルテールの著書『ルイ十四世の世紀』で
『アタリー』を高く評価しつつ『エステル』を貶してるのを
知らなけらばいかんせん意味不明なのだ。(´д`;)ギャボ

と、ここまでの過程の詳細は以下を参照してくだされ
『ボヴァリー夫人』のオメー
フローベールの『ボヴァリー夫人』からのラシーヌの『アタリー』
ラシーヌの『アタリー』と『エステル』
ラシーヌの『エステル』
マントノン夫人の高尚な意地悪『エステル』と『アタリー』

〆にラシーヌの『アタリー』と『エステル』を読むだけだが
これが全集でなければ読めぬ(゚ぺ;)ぬぬ

ちなみに『エステル』と『アタリー』は
マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』でも
「スワン家のほうへ」第一部の「コンブレ」で比喩に使われてるが
もちろんこの2作品をただ読むだけでなく
完璧に理解してなければやはり意味不明なのだなヽ(゚∀。)ノ

最後にここまで振っておいてなんだが
未読の中で真っ先に読み始めたしまったのは
『アレクサンドル大王』だった・・・ヾ(・_・;)ぉぃぉぃ

自分はアレクサンドロス大王ヲタでもあり
読書の仕方はいつも決まってて
未読の本はまず目次や索引からアレクサンドロスを探して
そこから読み始める癖があるからだ( *゚Д゚)つ[酒]