ラシーヌの『アレクサンドル大王』からの『ポロス 古代インド英雄伝』

筑摩書房の『世界古典文学全集【48】ラシーヌ』を買うまでは
『エステル』と『アタリー』が読みたかったのだが
気づけば真っ先に『アレクサンドル大王』を読んでたのは
アレクサンドロス大王ヲタとして当然だw

ところがこれが期待を裏切る駄作だった。(゚д゚lll)ギャボ

ラシーヌの2作目で一応、出世作になったらしいが
まだ本領は発揮してなかったようで
アレクサンドロスの相手役が美貌の王女なのを差し引いても
どうにも拙い点を挙げると以下の通り。(´д`;)ギャボ

1.クルティウス・ルフスやプルタルコスを参考にしたってワリには
  インド征服中のアレクサンドロスって設定を使ってる「だけ」に過ぎず
  ほぼフィクションで歴史的考察の余地も価値もなくつまらぬ

ラシーヌ自身が第1の序文において
作中の実在した人物ポリュスについてこう述べてるが・・・

クルティウス・ルフスの第8巻全部を写さねばならないだろう。

実際にはクルティウス・ルフスの『アレクサンドロス大王伝』では
ポリュスは第8巻の第13章と第14章にしか登場せず
この芝居全体の主題でも第8巻の第12章~第14章に収まってるので
全部写す必要なんて無くってよ?

それにしても些細ながら引っ掛かるのが
ラシーヌではポリュスとなってるインドのある国の王は
クルティウス・ルフスではポロスで
インドの別の国の王タクシルとその妹のクレオフィルは
タクシレスとクレオカレス・・・なはず

しかしクルティウス・ルフスの訳注には
クレオカレスは「不詳」とあり
タクシレスの妹だとする記述は一切無い^^;

アレクサンドロスは、ポロスにも自分の盛名によって帰順を強いることができると考え、クレオカレスを派遣した。

そもそもこの1文にしか出てきてなかったクレオカレスを
ラシーヌはなぜタクシレスの妹で
更にアレクサンドロスの恋慕する美貌の姫であると
思えたのだろうか(-_-;)?

第2の序文には以下のようにあった

アレクサンドロスとクレオフィルの恋は私の創作ではない。クルティウス・ルフスと同様、ユスティヌスもこれについて述べているからである。

なななんですと~Σ(゚д゚lll)ガーン

ユスティヌスの『西洋古典叢書 地中海世界史』!!

買いそびれてたコトに気付いたので
これを機に購入したw
まあ購入するまでもなく引用があったのだが・・・ヲタだからヽ(゚∀。)ノ

そのユスティヌスからの引用によれば
確かにアレクサンドロスの子を産んで同じ名をつけてた(゚*゚;)

しかし物語の主軸となってるのはこのカップルの恋愛ではなく
ラシーヌが創作した女王アクシアーヌを巡って
三角関係に陥る2人の王タクシルとポリュスだ(と自分は思う)

2.男女の恋愛の中でも美女を巡る恋の鞘当てなら
  もう少し登場人物の誰かに肩入れできそうなモノだが
  それぞれの思惑が空回りしてしまってるせいか感情移入し難い

アクアシーヌがアレクサンドロスとの和平を受け容れぬので
ポリュスはこれに倣ってあくまでも抗戦を主張し
タクシルはアレクサンドロスに情をかけられた妹クレオフィルに譲歩し
和平交渉に応じようとポリュスを説得するが拒絶され・・・と
交渉決裂してしまう2人の王

ここまででアクアシーヌが美貌以外にどこが魅力的なのかが描けておらず
ポリュスが命を懸けて戦うのが悲喜劇的に見えてしまうし
袖にされて犬死にするタクシルに至っては完全なる喜劇なのだ。(´д`;)ギャボ

それはクレオフィルについても同じコトが言えて
天下のアレクサンドロスが、しかも決して好色ではなかっただろうに
なぜクレオフィルに夢中になるのかが理解不能で(-_-;)

中ではアクアシーヌが1番アクが強いキャラだが
好感度は低いのでもう少しバックグラウンドが掘り下げられてなくては
なかなか共感がしづらいしね

3.主人公が誰なのかわからんてヽ(゚∀。)ノ
  タイトルにはなってるがアレクサンドロスでナイのは確かで
  あとの4人の主要人物の中にも主役らしい者はおらず

それなのにラシーヌ自身は序文で
「タイトル通りにアレクサンドロスが主役(てか主題)だ」と主張してるが
そんな主張をなぜわざわざしてるのかって
批評家の「アレクサンドロスが主役にしちゃ影が薄い」って意見に応えてのコトw

確かにアレクサンドロス讃歌的な作りではあると思うが
三角関係の3人の動向がストーリーを展開させてるのは間違いなく
しかもそこで主となる人物に焦点が絞れてなくて
てんでばらばらな印象のまま話が進んでしまうのが
この芝居を悲劇とも喜劇ともつかなくしてしまってるのだよ><

4.せっかく従者の中で唯一登場してるヘファイスティオンだのに
  その役ドコロは単なる伝令使でまるで人間性が見えてこず
  =誰がやったって同じって役ドコロに成り下がってしまってるのだ

いや、これは自分のかなり個人的な見解かなw

それにしてもラシーヌとは興味の範疇が近似であっても
そこから構築する世界観が今回は全く異なってて
読後は肩透かしを食らったカンジだ。(´д`;)ギャボ

☆追記☆。。。
こっちの方が面白そうだが・・・全299回って長過ぎるだろうヽ(゚∀。)ノ

ポロス 古代インド英雄伝
。。。☆