チャタレイ夫人の恋人

『ベランジェという詩人がいた』は
寄り道読書し過ぎて
なかなか読み進み難い本だ

興味深い話題が次々と繰り出されるので
その度に関連書籍を確認したくなってしまうのだ

今回はポール・ルイ・クーリエの
裁判記録の最後の一文に
以下のようにあって・・・

 ロレンスの『チャタレイ夫人の恋人』は、四十年以上前に摘発され、最高裁で有罪が確定した。現在、新潮文庫版の訳本は、今なお問題となった十数か所が削除されたままである。

驚愕した((((; ゜Д゜))) ガクガクブルブル

「現在」っていつよ?!

『ベランジェ~』は1994年に出てるので
執筆時点はそれよりも前だろうが
4年も前ってコトはなかろうから90年代だろう

21世紀を目前にしてるってのに
【猥褻】なんて理由で削除されたままはありえんてw

気になって確認したくなったが
手元にある『チャタレイ夫人の恋人』は
古本の筑摩世界文学大系【56】なので
どちらなのかだ

手にしてみれば当の伊藤整訳で
有罪判決から2年後の1959年発行の削除版で
削除部分にはアスタリスク(*)があり・・・

あとがきには裁判の過程の詳細もあって
端折って列記すれば以下のような経過だった

1950年4月に小山書店から
『ロレンス選集【第1巻】チャタレイ夫人の恋人【上】』
同年6月に同書店から
『ロレンス選集【第2巻】チャタレイ夫人の恋人【下】』
同年9月に東京地方検察庁が猥褻文書だとして
訳者伊藤整と出版社小山書店の小山氏が起訴され
裁判の詳細は割愛するが
7年後の1957年に出た判決は有罪で
罰金を払わされ
以降は削除版が出版された

なるほど筑摩世界文学大系【56】
1959年に出てるので削除版だが
換言すれば1950年~1956年に出てるのは
幻の完訳版ってコトになるのか?!

そうなると自分が高校生の時に読んで
不倫関係の男女の恋愛が気持ち悪く
濡れ場の描写には吐き気を催し
とても続けて読み通すコトができず
かなり読み飛ばした挙句に放置したのは
どっちだったのだろう?

便利な時代になったモノで
ググりまくったら集英社世界文学全集【34】で
これも伊藤整の訳だったと判明

そしてこれは1974年に出てたので
削除版だったのだ!
それでも十分濃厚だったがねw

この1996年に新潮社から出た伊藤整訳は
完訳版[1]追記:削除前の元のままでなく、息子の伊藤礼が削除版に対して補訳を行ったモノとなってるのだが
わざわざそうと銘打ってるくらいだから
1994年発売の『ベランジェ~』にあった通り
それまでが削除版だったって件とは辻褄が合う(゚ぺ;)ぬぬ

削除になったほどの性描写を
わざわざ読みたいとは思わなんだが
手持ちの削除版と比較してみたくなったので
今世紀になってから訳されてるのを
電子書籍で入手すべく探してみた結果
YAHOO!ブックストア(現ebookjapan)にしかなく
これが2005年4月25日発売だったので購入

早速、伊藤整の削除部分と照合してみたら
アスタリスクがあったΣ(゚д゚lll)ガーン

訳者が飯島淳秀(よしひで)だったので
「飯島淳秀 チャタレイ」でアマゾンで検索してみたら・・・

1985年に富士見書房から出てたモノを
電子書籍化したのだとしたら
削除版だったのも納得(゚*゚;)

電子書籍は発売日で惑わされず
元の書籍がいつ出てるのか確認が必要だ(゚ぺ;)ぬぬ

それでも飯島淳秀には
『チャタレイ夫人の恋人について・性の虚偽と真実』
なんて著書まであるので訳は精確に違いなく
期待を込めて巻末の解説から読み始めてみれば
19ページに渡り詳細に書かれてたので
買って損したとは思わなんだ^^

そして奥付けも2005年4月25日と
電子書籍版発売日になってたのだが
解説が出版時のモノか電子書籍化に際してなのか
疑問に思ってググってみたら
飯島淳秀は1913年9月30日生まれで
1996年には亡くなってた(-人-;)ナムアーメン

これで1985年版のままの解説だとわかったが
それにしては伊藤整の裁判について触れておらず
本文中に削除部分がある断りも無く
不審に思って調べてみたら
最初に三笠書房から出たのは1955年で
伊藤整の有罪判決より前だったりするので
これは完訳版で出てたのだ。(゚д゚lll)ギャボ

ところが1957年に伊藤整が有罪判決になり
飯島淳秀訳も以降は出版できなかったに違いなく
そのままお蔵入りしてたのを
1985年に削除版を富士見書房から出版するも
解説は1955年に三笠書房から出てたのを
そのまま使ってたのだろう

☆追記。。。参考文献一覧

宮本百合子の
『「チャタレー夫人の恋人」の起訴につよく抗議する』は
アマゾンkindleで無料で読めるるる~

武藤浩史の
『あなたの知らないロレンスとチャタレー』は
アマゾンkindleで¥220

武藤浩史も『チャタレイ夫人の恋人』を
2004年にちくま文庫から出してるが
これは間違いなく完訳版だろう

1999年に彩流社から永峰勝男による完訳版

2014年には光文社古典新訳文庫で木村政則による完訳版

そして2021年4月現在でも
アマゾンでは電子書籍化されてなかったりするが
SONYのReader Storeで見つけて購入した
伊藤整の『女性に関する十二章』

また筑摩世界文学大系【56】には
訳者伊藤整による解説「『チャタレイ夫人の恋人』の性描写の特筆」
一緒に収録されてるオルダス・ハクスリーによる「ロレンス論」
そしてこのシリーズの巻末に必ずある充実した作品解説と詳細な年譜
更に月報まで附いてて以下が掲載されてた

「ロレンス覚え書」南博
「ロレンスの旅行記」篠田一士
「ロレンス論」(スティーブン・)スペンダー[村上至孝訳]

References[+]