幸福な王子?幸福の王子?

感受性が鈍くなるのが大人になった証だとしたら
子供の頃には泣きながら読んでた物語でも
いつか泣けなくなるのだろうか?

幼少の砌からそんな日の到来を予想してたが
すっかりばあさんになってしまった今読んでも
ぐしゃぐしゃに泣き崩れてしまったのが
オスカー・ワイルドの『幸福な王子(幸福の王子)』だ

あらすじとしては・・・

生前を偲ばせるきらびやかな像の王子が
像になってみて初めて庶民の生活の実態を知って
驚愕Σ(゚д゚lll)ガーン

これを助けるために王子は
像を被う金箔や目玉のサファイア、剣の柄の飾りのルビーを
送り届けるようツバメに依頼するるる~

ツバメにとってはそんなの他人事で
王子に従う義務もなければ
むしろ越冬しなければ自身の命が危ナイ!

常識から言っても
王子が頼む相手を間違えてるので
ツバメは断って南の国へ旅立って何ら差し支えなかったのだが
人の(鳥の?)゚+.(・∀・)゚+.゚イイツバメはなぜか
少しはぶ~たれつつも王子に従う

いや、結局ツバメは越冬できずに最期を迎えるのだから
自発的に窮乏する人々を救ったのである!!

人間ならば命を懸けてまで
「従う義務無き命令」には従ったりせず
一見、そうと見える事態でも
自身や近親者の名誉に傷がつかぬよう慮って
つまりは社会的立場を守るためにやってたりするのだ(-_-;)

でもツバメにとっては
本来なら護るべきモノは自身の身一つであって
客観的に見ると
像の王子の低姿勢なモラハラの犠牲になってるみたいな?!

そう
モラハラ!!

子供の頃は
死に行くツバメの居た堪れなさに
憐憫の情から涙が溢れたし
王子のツバメに対する仕打ちの惨たらしさに
憤怒を覚えたものだったが
改めて、モラハラなのだと気付いた(゚*゚;)

王子も献身的ではあるが
なんせ像なのだよ
ぶっちゃけ元から生きてなくて
同情の余地は皆無だが
ツバメが死ぬ必要はなかった・・・(;つД`)

そして王子に同情の余地ナシとはしたが
それにしたって見栄えが悪くなったらお払い箱って
愚民の無関心と無慈悲を
なんて端的に表現してるのだろうヽ(゚∀。)ノ

そうして人間社会への憤りから
嗚咽してしまうのだった。・゚・(ノД`)・゚・。

ところで自分の思い描く幸福な王子は
いつの頃からかなぜか
『六神合体ゴッドマーズ』のマーグだw

ところで
オスカー・ワイルドの『The Happy Prince』は
新潮文庫の西村孝次訳では『幸福な王子』となってて
アマゾンの検索結果のトップに表示されてるるる~

でも今世紀になって
この新潮文庫の西村訳を買うまでは
偕成社かポプラ社辺りの児童版に従って
『幸福の王子』とインプットされてたので
買った当初は「な」にこそ違和感を感じてた(゚*゚;)

でも西村はオスカー・ワイルドの全集の訳者だったので
西村訳の『幸福な王子』こそが的確であると結論し
脳内データベースに上書き修正したんである

ところが今回
念願の青土社の全集の3巻を電子書籍で入手してみたら
なんと『幸福の王子』と「の」だった!

「な」と「の」・・・結局、どちらが正しいのか
アマゾンの検索結果を見れば見るほど
決して統一されてナイってコトだけはよくわかるw

新潮文庫版と青土社の全集での
タイトルの「な」と「の」の違いは
中身も「な」と「の」だけの違いなら
同じ訳者でも出版社が違うので一部変えた?
とか、納得のしようもあるが
実は文体からして全然違ってるのだった。(゚д゚lll)ギャボ

ここは一つ
両者をじっくり読み比べようと腹を据えるも
すぐに気付く歴然とした差異があった

それはルビと注釈で
青土社の全集の方には
ルビは殆どなく、注釈が14個もあり
新潮文庫版には
総ての漢字にルビがふってあり、注釈はそれ自体が存在せず

また、少し読み進めば
青土社の全集が些か古めかしい表現であるコトから
元々の訳は原文に忠実な訳の全集の方で
新潮文庫版はなるたけ平易な表現で
時代にマッチするように書き換えられたのだ
(と容易に想像できる)

ちなみに西村訳はどちらもkindle化されておらず
青土社の全集を自分はBookLive!で購入したが
通常は同じ訳者の文庫本と全集を買ったら
内容が完全に重複するので
文庫本の方は不要になるはず
(その不要になった文庫本の分だけでも
部屋の物理的なスペースが空くはず)

だがしかし
そんな思惑は見事に裏切られた。(´д`;)ギャボ

とんだ見込み違いではあったが
それは嬉しい誤算でもあり
新潮文庫版で引っかかってた部分が
全集の注釈で解明されてたり
初めて知って詳細を調べてみたコトなどもあった

次の記事ではそれらをまとめてみようと思う

推論でなく事実としての「な」か「の」かについては
自分が所有してる新潮文庫の
昭和42年(1967年)に記されたあとがきによれば
昭和28年(1953年)に『幸福な王子・夜鶯と薔薇』として
以下5編を同じ新潮文庫から初版発行

幸福な王子
ナイチンゲールとばらの花
わがままな大男
忠実な友達
すばらしいロケット

その5編に加筆修正をして
未収録だった以下4編を加えたモノが
『幸福な王子』として改版発行されてて・・・

若い王
王女の誕生日
漁師とその魂
星の子

奥付けによればそれは昭和43年(1968年)だった

そして青土社の全集の3巻
SONY Reader Storeによれば
「書籍発行日 : 1988.9.30」とあるので
新潮文庫と内容が丸被りしてしまうのが不味かったに違いなく
先の5編だけでなく、後から取り入れられた4編にしても
全集の方が幾分古めかしい表現となってるのは
出版社側の事情だろうw

それにしてもアマゾンで検索中に見つけたのだが
このAudible版ってヤツ・・・

オーディオブックが聴けるんだそう(゚⊿゚)イラネ

本を最初から最後まで順に読むのが
既に苦痛な自分にとって
最初から最後まで勝手なペースで
他人が読んでくのを聴かされるなんて
拷問でしかナイので
どこに需要があるのかさっぱりわからんが
こんなモノより西村訳がkindle化されるのが先だろう?

まあ、アマゾンはとりあえず
全集1冊¥5,000強×全6巻を稼ぎ損ねたなw

そして検索中に見つけて吐き気を催したのが
原マスミの描く、絵本『幸福の王子』だ
ハッピーエンドに結末を変えただけならまだしも
王子が人間だった頃のエピソードもあるとかヽ(゚∀。)ノ

美しく儚い物語が商業的成功のためにか
大衆向けの脳天気な設定に捻じ曲げられる気持ち悪さは
自分のような耽美主義者には耐え難い(゚*゚;)

著者ワイルドもそうと知ったら憤死しそうだから
とうに亡くなってて好かった・・・のか?

原作を冒涜するのは
ディ〇ニーだけで沢山だが。(´д`;)ギャボ
世も末だな・・・