トマス・ハーディの『ダーバヴィル家のテス』の
テスがそうなのだが・・・
ヴィクトリア朝の貧農の娘ってのは
どうしてこうも病的なまでに
貞操観念が強いのか?
サミュエル・リチャードソンの『パミラ』の
パミラも純潔信奉(?)で
純潔を護るために死ぬ覚悟だったりして・・・
現代日本人の自分には
以前は全く理解不可能だった><
結婚前に純潔を失う=堕落する=地獄に落ちる
そう信じてたのだし
私生児を産んだ女には世間の風当たりが強かったので
自分が奇異に思うほど
彼女らが病んでるワケでもなかったり^^;
ところでヴィクトリア朝は
ハノーヴァー朝末期のヴィクトリア女王が統治してた時代で
西暦1837年から1901年だが
アメリカの作家ナサニエル・ホーソーンが
『緋文字』を発表したのが1850年で
まさに同時代だった
1607年に英国人が入植したのがアメリカの始まりだが
最初の入植地はジェームズタウンで
現ヴァージニア州にあった
1620年にはかのメイフラワー号で
新天地を求めたピューリタン(新教徒)が
現マサチューセッツ州ボストンの南東に移民し
イギリスのプリマスから出航したので
そこをニューイングランドと呼びプリマスと名付けた
ニューイングランドのセイラム(現ダンバース)で
忌まわしい魔女裁判が起こったのは
1692年
200人近くの女性が告発され
異端審問を余儀なくされ
19人もが処刑されるに及んだ((加えて獄死者5人、拷問中の圧死者1人))
ホーソーンはセイラム出身で
まさに彼の祖先こそが
魔女裁判の判事をやってたのだが
そうと知った瞬間に
隣町の神保町へ走ったのが
2011年末
神保町の古書店街に行く度
岩波文庫や旺文社文庫の『緋文字』を
必ずどこかで目にしてたので
¥100~せいぜい¥300で購入できるだろうし
他にも掘り出し物があれば・・・♪
と目論んでた
¥500で3冊まで買える
小宮山書店のガレージセールは
あればここで買うのが最もお得なので
いの一番に立ち寄ったが
河出書房の世界文学全集があって
13巻はポーとホーソーンで
ちょうど『緋文字』が収録されてた
3冊まで¥500でも
これ1冊でも十分お得だったが
同じく河出世界文学全集に
ドストエフスキーの巻もあって
収録作品が1番好きな『白痴』だったので
これも迷わず購入!
この2冊が1冊千円だったとしても
状態も好かったので買ってただろうから
2冊で¥500はかなりお得感があったが
3冊までだからもう1冊買えるので
探してて見つけたのが
筑摩世界文学大系のホーソーンの巻!!
しかもホーソーンとマーク・トウェインって
素晴らしいカップリングで
ホーソーンは『七破風の屋敷』と短編3作品で
トウェインは大好きで何度も読んだのに
持ってなかった『ハックルベリー・フィンの冒険』と
月報もちゃんと付いてた・・・ポカーン。(゚д゚;)
3冊とも40年以上前の古本で
さすがに外箱には経年劣化が見られるも
中身は全く綺麗で傷みも無くて
会計で¥500を払う際には
嬉しさで笑いをこらえるのに必死だった(゚*゚;)
河出世界文学全集の
ポー/ホーソーンの巻は13巻で
ホーソーンは『緋文字』のみ収録で
訳者は太田三郎
巻末には年表と解説があって
巻頭はポー(松村達雄訳)の短編で
収録作品一覧は以下
- ウィリアム・ウィルソン
- 群集の人
- 大渦にのまれて
- 陥穽と振り子
- ライジーア
- アッシャー家の崩壊
- 妖精の島
- 赤死病の仮面
- 黒猫
- モルグ街の殺人
- アモンティリャードの酒樽
- マリー・ロジェの謎
- 盗まれた手紙
- あばき立てる心臓
- 黄金虫
- ハンス・ブファールの無類の冒険
- アルンハイムの地所
これらがハリー・クラークの挿絵入りで・・・
『赤死病の仮面』の
ビアズリーのイラストも
オマケのしおりの表紙だったりで・・・
これまでの人生で幾度となく
お得に古本を買ってきたが
¥500でこの3冊は
お得感パネェ~(^^)
そんなカンジで
自分は人生の中で何よりも
巡り合わせに恵まれてると実感したが
今から思い起こしてみても
ホーソーンってそんな人だったのか~
で、終わらさずに
すぐに行動を起こして大正解だった
てか、突き動かされたように
ふらふらと神保町へ歩いてってしまって
ホーソーンをお得に網羅できたのは
単なる偶然にしては出来過ぎで
シンクロニシティ運って運気があるとしたら
自分、この日は最強だったに違いナイ
そしてそんな日に
初めて『緋文字』を読んだ
【緋文字:The Scarlet Letter】
その奇妙なタイトルは
以前から何のコトやらと気になりつつも
見当さえつかなかったが
謎が解けてみると
「A」の文字が刺繍されたモノだった
この「A」は何かって
「adultery(姦通、姦淫、不倫、不義密通、婚外性交)」の意で
私生児を産んだ母親を指し示してるのだが
その罪を犯した女が必ず胸に付けて
いつでもどこでも誰にでも
そうとわかるための目印だった。(゚д゚lll)ギャボ
しかし胸に着けた緋文字のために
白眼視され続けるヘスターが
その罪の子とされる子を
女手一つで地道に育ててく生きザマは
誰よりも清く正しく美しく・・・
強い。・゚・(ノД`)・゚・。
感動しながらも空恐ろしくなったのは
小説『緋文字』はフィクションで
モデルなどがいたワケでもなかったが
【緋文字】の罰を受けた罪人は
実在してた気がしたからだ
より正確に表現すれば
【緋文字】の罰を与えた社会が
実在してたとしても疑う余地が無いくらいに
時代背景である1650年頃のアメリカが
中世さながらに暗黒だったと
改めて気付いたからだ
西洋ではキリスト教の教義に反したら
その人間を罪人扱いして
社会的に排除するような風習が
民間に根強くあると認識してはいたが
アメリカでこんなだったとは・・・
ヴォルテールの『寛容論』には
キリスト教がいかに不寛容な宗教なのか
否、中世~近代のキリスト教徒が
いかに不寛容な振る舞いをしてきたか
その詳細が描かれてるが
それを思い起こして身震いした
どうもアメリカ文学には疎くて
てか、文学全般に渡って古典以外は疎いので
唯一好きな作家がトウェインだったが
他には一切読んでおらず
ホーソーンも『緋文字』の作者としか知らず
しかもその『緋文字』さえ
40年以上読まずに生きてたのだが
読んで心打たれてみれば
これまで避けてた自分を悔いたし
恥じた・・・