謎の解剖学者ヴェサリウス

西洋ではルネサンス期まで
書物はラテン語で書かれてたが
内容もほぼローマ帝国時代のままだった

確かに
普遍の真理に基づいて書かれてるモノなら
時代背景の違いを考慮すれば
2,000年の時を隔てて読んでも
話は通じるるる~

しかし科学(自然科学、医学技術、その他)だけは
新説に覆されて学説が変遷する特性があり
しかも近年はまさに日進月歩で
真逆の説が正しくなったりもする程!

良い例が「ヘルシーな食事」で
前世紀までは動物性脂肪を控えた食事で
バターは止めてマーガリンにしたり
ローファットは正義だったが
今世紀になってからは
脂肪より糖質を控えるべきとなった

そんな風にほんの20年の間に
基本方針が180度転換してしまうコトさえあり
そういう事例からすれば
古代ローマからルネサンス期まで
千年以上も同じ学説が受け継がれてるのは
全く科学的ではナイ。(゚д゚lll)ギャボ

ましてや真偽の検証も行われず
盲目的に信奉されてきたとしたら
それは科学と言うより宗教であろう。(´д`;)ギャボ

実際、古代ローマの医師ガレノスは
医学・医術の権威として
ルネサンスに至るまで
その著作が妄信されてて
大学での講義に使われてたのは
ガレノスの著書だったのだ

そして人体の解剖図としては
14世紀のモンディーノ・デ・ルッツィ作や・・・

15世紀のヨハネス・デ・ケタム作の・・・

余りにも稚拙なモノが最新だった・・・バタリ ゙〓■●゙

それが16世紀になって
アンドレアス・ヴェサリウスによって
理科室の標本と合致する解剖図が
ようやっと作成されたのだ!

いや、むしろ
ヴェサリウスの筋肉人や骨格人は
その叙情的なポーズと
牧歌的な背景とが相俟って
繊細な芸術作品のように仕上がってて
同時代の2人の天才芸術家
レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロと
比較したくなるレベルなのだがね^^;

レオナルド・ダ・ヴィンチもミケランジェロも
自ら解剖を行ってて
精確に筋肉や骨格を把握してたのを
作品に反映させてたのだから
精度の高さが比肩するのも必定

そしてダ・ヴィンチやミケランジェロは
医者ではなかったからこそ
当時の医学の権威に屈する必要がなく
解剖したままを描くコトができたのだろうて!!

ちょっと話が横道に逸れるが
システィーナ礼拝堂の
ミケランジェロ作の天井画に
脳(神経)の解剖図が
隠し絵として描かれてるコトが
ジョンズホプキンス大学の脳外科から
論文発表されてたと・・・

ミケランジェロの「隠し絵」神の姿に脳幹解剖図

そう、ルネサンスの医学の権威・・・
それが2世紀のガレノスだったワケだが
ヴェサリウスは逆らうつもりも無かっただろうに
権威主義によって医大の教授や医学生からの
風当たりは強かったようだ><

そんなヴェサリウスの生涯や
その著書の紹介もさるコトながら
解剖学の歴史的変遷の大きな流れの中での
彼の生きザマに迫ってるのが
この『謎の解剖学者ヴェサリウス』

改めて
科学を愛する気持ちは
人間を愛する気持ちから発してると
妙に感動したね。・゚・(ノД`)・゚・。

科学者の身を削るような努力から見出される真実は
それ自体ももちろん素晴らしいが
科学者の真実を探求して止まナイ純粋な欲望と
その欲望に忠実に生きる姿勢が
人として素晴らしい・・・ホゥ(*-∀-)

『謎の解剖学者ヴェサリウス』は
解剖学の解説本ではなくて
ほぼほぼヴェサリウスの伝記で
文章としては平易で
専門的な用語も出てこなくて
刺激的な解剖のシーンなどもなくて
一般的には読み易い書籍^^

それにしても見落としがちだが
防腐処理など殆どされなかった時代に
死刑囚の遺体を解剖してスケッチしたって
恐らく気を失いかねナイような
想像を絶する臭いの中でだったろう(゚*゚;)