映画『メアリーの総て(原題:Mary Shelley)』のあらすじと考察

映画『メアリーの総て(原題:Mary Shelley)』は
主役のエル・ファニングが大好きで
時代背景も興味深かったので
観る前に気になるコトを予め調べてメモをまとめて
記事(映画『メアリーの総て』)にしてて
この度やっと観れたのだが・・・なるほどね。(´д`;)ギャボ

大まかなあらすじとしては
メアリー・シェリーが18歳で
『フランケンシュタイン』を書き上げ
まず匿名で出版されてたのが
名入りで出版されるまでの経緯

もう少し詳しくだと
メアリー・シェリーの夫は
ヴィクトリア朝のロマン派詩人
パーシー・ビッシュ・シェリーなので
メアリー・シェリーなのだが・・・

結婚前はメアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィンで
父親がウィリアム・ゴドウィンで
母親がメアリー・ウルストンクラフトだったからだ

両親とも政治思想家だが簡単に述べれば
父親はアナーキストで母親はフェミニストであり
先進的で結婚制度を否定してたのに
メアリーを私生児にしたくなかったがために
教会で結婚した

しかし母親はメアリーを産み落とすと
11日後には産褥熱で38歳で亡くなってしまうのだが
この母親がなかなか曲者だった

例えば
フランス革命を否定したエドマンド・バークに対して
反対意見を述べてたとか・・・

肖像画を描いてもらったくらいだから
ヨハン・ハインリヒ・フュースリーとは
親交があったようだが・・・

ヨハン・ハインリヒ・フュースリー『夢魔』

メアリーの実の母親については面白そうだが置いといて
メアリーは継母とは折り合いが悪かったようで
父親の友人宅に預けられてたりしたが
それがパーシーとの出会いに繋がるのだった

そうして彼との馴れ初めから
駆け落ち~結婚に至る経緯もあり
恋愛映画としても見応えがあるのだ

なんせメアリーはパーシーと
最初はそうとは知らず不倫関係にあり
フランスへ駆け落ちするのだが
その際にはメアリーの妹クレアも一緒で
しかもクレアは実の妹ではなく
継母の連れ子なのだった

このクレアがいつの間にか
詩人のバイロン卿と関係を持ってしまうのだが
お陰で借金のせいで結婚生活が破綻寸前で
身の破滅まであと一歩だった3人は
スイスのバイロン卿の元へ?!

そもそもバイロン卿がスイスにいるのは
同性愛と近親相姦のスキャンダルで
奥方に愛想を尽かされたからで
クレアとの浮気はまだマシな方だったw

いや、でもそれでレマン湖畔の別荘ディオダティ荘に
バイロン卿と主治医ポリドーリ(恋人?)と
メアリー、シェリー、クレアの5人が揃ったトコロで
バイロン卿が1人1つづつ怪談を作ろうと提案し
メアリーは『フランケンシュタイン』を書き始めたのだった

それにしても
主人公のメアリー目線で描かれてるせいか
パーシーは一言で言えば酷い男だ。(゚д゚lll)ギャボ

妹の同級生と結婚してて
子供(女の子)までいるのにメアリーには隠してて
バレたら「自由恋愛」を盾に開き直り
妻子を捨て置いたままメアリーと駆け落ちして
そのせいで親に勘当されてしまうと
資金繰りが行き詰まって借金(゚Д゚)ハァ?

債権者の取り立てから逃れるために夜逃げを決行し
体調を崩してた子供は騒動の渦中で死んでしまい[1]史実では第一子は生後すぐに亡くなってて夜逃げが原因ではなさそう?
悲嘆にくれるメアリーにかける言葉が
「運命だ」という責任転嫁で
自身に対してはまるで反省の気配は全く無く
それでいてメアリーを非難さえする始末(゚Д゚;)ハァア?

人間には2種類いて
どちらが良い悪いではなく
それが男女の性差とも別に存在するが
1つは社会に対して真っ当に取り組んで生きるタイプと
もう1つは反社会的な態度で夢見がちに生きてるタイプだ

前者は多少アウトロー風味に行動したとしても
社会規範やモラルからそうそう外れずで
それは責任を持って生きてるからで
難関でも局面を打破すべく考えて
少しでも良い結果を齎すよう行動をするので
結婚をすれば結婚生活をより良い形で全うしようとするが
後者は自身も周囲も現実や実体が見えておらず
あるいは見えてても夢想してるモノと違うので受け入れず
だからと言って望みを叶える努力もしなかったり
唯一する努力が一獲千金を狙うコトだったりするので
そのために他人を欺くのは平気で
結婚をすれば結婚生活にすぐに嫌気が差す

そんな相反する同士で結婚すると
前者は後者に振り回されて
気付けば身も心もボロボロにされた挙句に
総てが破綻する時には全責任だけを背負わされかねず

メアリーは明らかに前者でパーシーは後者なので
パーシーの前妻の自殺によって
晴れて(なのか?)結婚して夫婦になるも
結局は前妻と同じように捨て置かれるワケで
きっと前妻も前者だったろう(-_-;)

それにメアリーが明らかに前者なのは
継母の連れ子であっても慕ってくれる妹を
パーシーとの駆け落ちする際に
すがりつかれて一緒に連れて行く当たりがねヽ(゚∀。)ノ

パーシーは夫として、いや、人としても
女性ならば100%が最低の男と評するだろうし
生前には成功を収めておらず
一般的な評価も低かったと思われ。(´д`;)ギャボ

しかし誰でも知ってるこのフレーズは彼の作だ

冬来たりなば春遠からじ

映画の中では何度か詩篇を読んではいても
それだけでスルーされてるせいか
見過ごされがちだと思われるが
死後にじわじわ認められるようになって
実は才能はあったのだったヽ(゚∀。)ノ

なんせ自分が持ってる筑摩世界文学大系88巻の
『名詩集』にも2篇が掲載されてるが
これは古代ギリシアから現代アメリカまで[2]出版当時は平成3年=1991年
全ての詩の中から厳選された2篇なのだから
なかなかたいしたモノだ!

そしてその2篇の内の1篇が
最終行に「冬来たりなば・・・」のフレーズが入ってる
「西風へのオード(Ode to the West Wind)」だ
但し、土岐恒二訳では・・・

冬がくれば、春はもう遠くはあるまい

岩波文庫の『イギリス名詩選』に出てる2篇も
内1篇はこの詩なくらいなので
パーシー・ビッシュ・シェリーの代表作的な作品なのだろう

こちらはシェイクスピア訳で名高い平井正穂の訳で
名の表記もパーシ・ビシー・シェリーで
「Ode to the West Wind」は「西風の賦 (ふ) 」

ちなみに『イギリス名詩選』は66人の百篇の詩が
英語と日本語とで見開きページで並べて収録されてるが
下段には訳者の詳しい注釈があって
この詩が1819年の10月にフィレンツェ近郊で
実際に激しい西風に吹かれてペンをとったとあった

西風と言われたら
ギリシア神話のゼピュロスを想起するが
古代ギリシアヲタだったシェリーも
はっきりゼピュロスとは書いてなくとも
そうと意識してたに違いなく(^^

しかしこの詩には不吉なイメージがあり
ボッティチェリによるこのゼピュロスがしっくりくるるる~


プリマヴェーラ~春~

不吉なイメージを齎してると思うのは
そう思わせるモチーフが次々と繰り出されるからで
ミルトンを倣って枯れ葉の山を死骸に譬えてたり
Maenad=バッカスの巫女が狂乱してるとか
最後から2行目の預言のラッパを吹くなんてのは
ヨハネの黙示録かよ((((; ゜Д゜))) ガクガクブルブル

「冬来たりなば春遠からじ」しか知らなければ
なにやらほっこりするほどだが
全体としては吹きすさぶ嵐に荒れ狂う海とか
何か恐ろしいコトが起きる前触れのような情景なのだ

それは書かれた時期(1819年の10月)から推測すれば
次々とメアリーとの間に生まれた子が死んでしまい
ロマンチストの男ほど子供や小動物の死を悼むのだから
シェリーにはかなりの心痛だったろう><

差し迫ってくる死に対しては抗いようも無く
その心情を詠ったのだとしたら同情を禁じ得ず^^;

そしてシェリー自身が没したのは3年後の1822年だが
イタリアのヴィアレッジョ沖で溺死した経緯は
スポラデス諸島のある島を購入して
そこにあった廃墟を改装して使う予定だったそうで
船を買い、友人エドワード・ウィリアムズと共に乗り込んだが
その船が暴風雨にあって沈没したのだった

まだ29歳の若さだった・・・

なお、『鎖を解かれたプロメテウス(Prometheus Unbound)』は
メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』のタイトルにもあるが
シェリーの1820年発表のクローゼット・ドラマ・・・
つまり上演を目的とせずに書かれた戯曲の題名で
ギリシア神話の世界観を題材にしてた

それにしても改めてキャストを確認したら
『ボヘミアン・ラプソディ』でロジャー・テイラーの
ベン・ハーディも医者の役で出てたのね?!

全然、気が付かなかったけど・・・w
髪形で、特に長さで印象が変わるからなぁ

そしてメアリーの夫パーシーを演じた
ダグラス・ブースなる役者だが
『WorriedAbouttheBoy』って伝記映画(?)で
なんとボーイ・ジョージ役やってたwww

これは観てみたいが
日本では全くスルーされてるぽい?

映画『メアリーの総て』

References[+]