考える葦でなく、風に揺れる葦とは?

モーパッサンは
『Maison Terrier(メゾン テリエ)』で
お祝いに集まってきた人々を

そよ風にゆらぐ葦

と表現してて
原文のフランス語では次のようにあった

comme des roseaux sous la brise

comme:~のような
roseaux:葦
brise:弱い風(通常の風は vent で brise はそれより弱い風)

vent では喧噪の只中の群衆のようで
モーパッサンにしてみれば
お祝いにかけつけた人々の心情に相応しく
brise としたのではなかろうか?

河盛好蔵の訳が「そよ風」なのも美しい

これとは逆に
混雑した中で押し合いへし合いする群衆を

風に揺り動かされる芦(あし)のやうに揺られながら

と表現してるのは
トマス・ハーディの
『Far From the Madding Crowd』1)上記の訳は昭和初期世界名作翻訳全集『遥かに狂乱の群を離れて』で訳者は英文学者宮島新三郎だが、邦題は『遥か群衆を離れて』が一般的で映像化作品の邦題もこれだ

原文の英語は未確認なれど
タイトルの『Far From the Madding Crowd』からして
ユダヤ人に言わせれば
「荒野の葦原より遠のいて」か?!

☆・・・☆・・・☆

頑丈な樫の木が
何があってもびくともせずと
自信満々でいて
鳥が留まったり風が吹いたりしただけで
たわんでしまう葦を
冒頭では憐れんでるのだが
最期には暴風によって
葦はいつものようにたわんだだけだったが
樫は根こそぎ倒れてしまった

と、そんな話が
ラ・フォンテーヌの寓話の
『樫と蘆(あし)』だが
これもパスカルの考える葦と発想が似てて
その手法の巧みさも比肩する

葦の弱さを認めてて
しかもわざわざ樫と比べてまでして
際立たせておいた上で
でも実際には樫よりも強かった

☆・・・☆・・・☆

それにしても
葦、蘆、芦、葭・・・と
葦の字は色々ある

References   [ + ]

1. 上記の訳は昭和初期世界名作翻訳全集『遥かに狂乱の群を離れて』で訳者は英文学者宮島新三郎だが、邦題は『遥か群衆を離れて』が一般的で映像化作品の邦題もこれだ